| 小坂部姫 | |
| 作者名:岡本綺堂 播州姫路に伝わるオサカベ姫伝説★を元に描かれる、伝奇長編。 ある夕刻、吉田兼好の庵に美しい娘が訪ねる。娘の名は小坂部。兼好を訪れたのは、塩冶判官高貞の妻に対する恋情に悩む父・高師直のために、恋文の代筆を頼むためだった。 小坂部が携えてきた文を喜んだ師直は、娘の「思い人と結婚したい」という願いを聞き入れる。小坂部の思い人は、家臣の若侍・本庄采女だった。 しかし小坂部の兄・師冬は妹に有力者との結婚望んでおり、采女との結婚には反対だった。 件の恋文は塩冶の妻に届けられた。小坂部は返歌の内容が拒絶を意味していると察したが、師直にはその本意をくみ取れない。 小坂部が今一度兼好法師に相談しようと出掛けた道すがら、一行は『眇目の唐人』と呼ばれる奇妙な男と出会う。 唐人は「神のお告げにより、小坂部を訊ね来た」と云う。侍女たちに追い払われた唐人は、呪詛らしき言葉を唱えつつ姿を消す。 小坂部が留守にしている間、返歌の本意を侍従が師直に告げてしまった。 兼好法師の留守宅から戻った小坂部に、師直は「(恋を)思い切った証拠は一日か二日のうちによう判る」と告げる。 師直は部下達を招集し、将軍足利尊氏の館へ出仕した。塩冶判官を謀叛人と讒訴し、妻を奪おうと画策したのだ。 兄・師冬が塩冶討伐に反対して父に退けられたと聞き、小坂部も父を諌めようと努めるが、師直は聞く耳を持たない。 小坂部は本庄采女を伴って屋敷を出て行く。行き先は塩冶の屋敷。小坂部は塩冶判官の妻に次第を告げた。 その帰り道、またしても『眇目の唐人』が現れる。小坂部は不安を感じつつ、兄・師冬の元へ身を寄せる。小坂部に采女との結婚を諦めるよう説得する師冬。 小坂部が屋敷に戻ろうとしたとき、娘の裏切りを知り怒り狂った父の刺客が彼女を襲う。 そこに『眇目の唐人』が現れ、小坂部達を救い出す。 近隣の村が焼かれ、小坂部は父の所行を悲しみ、父の元へは戻らないと決心する。 師直の部下が小坂部を探し、捕らえようとする。小坂部は自ら懐剣を持って抵抗する。采女も奮戦したが倒れされる。小坂部は『眇目の唐人』の手引きで漸く落ち延びる。 小坂部が辿り着いたのは蝙蝠と梟が棲む姫山の城。『眇目の唐人』は小坂部に「あの天主閣がお身の棲家」と告げる。 さらに『眇目の唐人』は高師直・師冬親子の哀れな死を予言し、自身を「夜叉羅刹・阿修羅の呪いをもって、幸いを禍いとし、治世を乱世にする」存在であるという。そして小坂部を「いにしえの玉藻の前に匹敵する悪魔の徒党」と断じる。 小坂部が拒絶し「死んだ采女を生かして返せ」と云えば、眼前に采女の幻が現れる。 采女の蘇りの引き替えに仲間となれと迫る『眇目の唐人』。采女の幻もそれを勧める。 小坂部は云われるままに血盃をすすった。 その後、高師冬は討死、高師直は謀殺された。 時は流れ、江戸。姫路藩主となった松平忠明が江戸城へ登ると、将軍家光は彼に「天主閣を守り神として疎略にするな」と命じた。 代々の城主がこの守神を篤く奉ったが故に、徳川時代二百六十余年の太平が続いたという。 (2012/02/02(Thu) 17:31) | |
| 小坂部伝説 | |
| 作者名:岡本綺堂 綺堂先生が戯曲・小坂部姫を書くに当たって、「播州姫路の小坂部(長壁姫、小刑部姫、刑部姫)」について調査したちょっとしたことについての小まとめ的な文章というか、エッセイ・随筆というか。 因みにオサカベ姫とは、姫路城の天守閣に隠れ住むといわれる「妖怪」あるいは「守護神」。 蝙蝠を従えた老姫、または、十二単を着た気高い女性の姿をしていると伝えられる。 「姫の顔を見た者は即座に命を失う」「800匹の眷属を操り、自在に人の心を読み、人の心をもてあそぶ」「住処に人が立ち入ると、身の丈1丈(約3メートル)に巨大化して追い払う」「年に一度だけ姫路城主と会い、城の運命を告げる」等の伝承がある。 正体は、一般には老いた狐とされる。別の説では、井上内親王(717〜775年。光仁天皇の廃后)が義理の息子・他部親王(光仁天皇の廃太子。桓武天皇の異腹弟)との間に産んだ不義の子、伏見天皇(1265〜1317年)が寵愛した女房の霊、蛇神(姫路では蛇をサカフと呼ぶことがあるため)、姫路城のある姫山の神、刑部氏の氏神「刑部明神」と「稲荷神」とが習合されたもの、等。猪苗代城の妖姫・亀姫の姉という「設定」もある。(泉鏡花の天守物語参照) 綺堂先生の調査では「刑部姫は高師直(不詳〜1351年。塩冶高貞の奥さんに横恋慕して、吉田兼好に恋文を代筆させたけど、結局振られて、腹いせに高貞に謀反の罪を着せちゃったひと。この辺のエピが『仮名手本忠臣蔵』に利用されている)の娘」という説が出てきたので、長編小説小坂部姫もその設定を生かしたとのこと。 (2012/02/02(Thu) 15:01) |
| 玉藻の前 | |
| 作者名:岡本綺堂 伝奇物。 美しい少女藻(みくず)と、その幼なじみで烏帽子職人見習いの少年・千枝松。 毎夜父親の病平癒を願って清水詣をする藻だったが、ある夜、出掛けたきり戻らなかった。 千枝松と陶器師の老人が探しに行くと、妖しげな古塚の麓で眠る藻を見つける。藻は髑髏を枕に眠っていたのだった。 この出来事の後、藻の美しさは妖艶なまでに増した。これを知った関白忠道に召し出され、藻は宮仕えの身となる。 藻と離ればなれとなった千枝松が傷心の余り命を失いかけたところを救ったのは、陰陽博士安倍晴明が六代の孫の播磨守泰親。千枝松は泰親の弟子となり、陰陽道の修行を始める。 一方、藻は「玉藻の前」と呼ばれる女官となっていた。 玉藻の前の妖しい魅力のため、宮中では勢力争いが活発化し、刃傷沙汰や高僧の怪死などの変異が起きていた。 玉藻の前には魔性が取り憑いていたのだ。 敵味方に分かれた藻改め玉藻の前と、千枝松改め千枝太郎。千枝太郎は魔性の敵となった玉藻が、それでも忘れられずにいた。 陰陽師の調伏の祈祷と玉藻の前の神通力の闘いは、玉藻の前の勝利に終わるが、これは実は陰陽師側の作戦でもあった。 千枝太郎は玉藻の前の変化が古塚にあると気付き、その地に祭壇を築いて調伏祈祷を始めた。 祈祷は覿面。玉藻の前は雷鳴と供に姿を消す。 やがて那須篠原に白面金毛九尾の狐が現れ、人畜に害なすという報告が上がる。 その正体は玉藻の前。 陰陽師により調伏された玉藻の前は、不思議な形の石に変じた。 石となってなお、九尾の狐は周囲に呪いを振りまき、近づく獣も鳥も、そして人も死んでゆく。 石はやがて「殺生石」と呼ばれるようになった。 いまだ藻の面影が忘れられぬ千枝太郎は、殺生石を訊ねた。 千枝太郎が「藻よ、玉藻よ」と呼びかければ、石は美しい玉藻の前の姿に変じた。 玉藻は問う。 「お前はそれほどにわたしが恋しいか。人間を捨ててもわたしと一緒に棲みたいか」 千枝太郎が答える。 「おお、一緒に棲むところあれば、魔道へでも地獄へでもきっとゆく」 幾日か後、ひとりの若い旅人が殺生石を枕に倒れているのが見付かった。 旅人の顔には微笑があったという。 | |
| 天守物語 | |
| 作者名:泉鏡花 1917年初出の戯曲。台本形式。 播州姫路。白鷺城の天守には、あやかし達が棲んでいた。 主は絶世の美女・富姫。奥女中・薄を筆頭に、桔梗、萩、葛、女郎花、撫子の侍女達に傅かれている。 そこへ猪苗代から妹・亀姫が遊びに来る。お供は舌長姥と朱の盤。亀姫が手土産の「猪苗代の城主の首級」を眺めながら、煙管で一服したり、手鞠に興じたり。 亀姫の帰り際、富姫は鷹狩りの一行から奪った見事な鷹を土産として持たせたのだった。 その晩、天守に一人の若侍が上がって来た。 鷹匠の姫川図書之助は、行方の知れぬ鷹を探せと、城主・播磨守のに命じられてきたのだった。 怪異あやかしである富姫と対面しても一行に動じぬ図書之助の涼やかな態度に感じ入った富姫、本来なら生かして返さぬところを還してやることにした。図書之助から人間界、こと侍の世界の話を聞くうち、富姫はその理不尽さ呆れ、同情するうちに、その思いは思慕、恋情恋へと転じていた。 富姫は図書之助が天守へ登った証拠として、姫路城主が家宝「青竜の御兜」持たせてやるのだった。 ところが、その兜のために図書之助は家宝を盗み出したと疑われ、処刑されそうになる。 大立ち回りの末、あわやの所を逃げだした図書之助、天守へ駆け上り……。 | |
| 十萬石(十万石) | |
| 作者名:泉鏡太郎(泉鏡花) 松代真田家第6代藩主・真田幸弘(幸豊)公と、家老・恩田木工民親のエピソード。 「上」は倹約を推し進める主君の心身を思って「小鳥を飼ってみては」と勧めた家臣某に対して、それは贅沢だと判じた幸豊公の某に対する裁断(仕打ちと云っても良いかも)と、それに対する恩田杢(木工)の忠言。 「下」は、恩田杢(木工)を家老職勝手係に取り立てようとしたときの顛末。 旧字・旧仮名 (2012/01/30(Mon) 16:48) |
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